就業あっせん~建設科卒業Yさんの場合~

Author: Akiko Mori

パアン技術訓練学校で学ぶ学生のほとんどが男子で女子は少ないです。理由は、いろいろとありますが、学ぶ技術がミャンマーでは一般的に男子が好むものというのが理由にあると思います。しかし、実際は女子も興味があれば学べる内容でこれまで数名の女子学生が本校で学び卒業していきました。そのほかにも理由があります。政府の規定で敷地内に女子寮が作れず、女子の採用が難しいのです。最近では、弊会スタッフ用の女子寮に学生を下宿させることが多いです。

 

今日は、2023年4月に建設科を卒業した女子学生の卒業後の様子をお伝えしたいと思います。

 

女子学生は入学させないで

最近、建設科卒業生の就職率がよくない話は以前にも書きました。建設科責任者からは、今後は女子学生を入学させないほうが良いと思うと提言がありました。ただでさえ、建設現場が減り卒業生の就職率が減っているなか建設現場で女性を採用してくれるほど理解と余裕があるところが少ないというのが理由です。

 

現に前回の建設科卒業生に女子学生が2名いました。卒業時に彼女らの働く先はなく、更に残念なのは彼女らの地元は戦禍で実家に戻ることができなかったことです。学校がある近郊で住み込みの仕事がないだろうかと学校に相談がありました。

 

Yさんのストーリー

Yさんは、カレン州タウンダウンジ郡の村落出身の19歳。7人家族で、両親はビンロウの木やドリアンなどの果樹園を営み生計をたてています。Yさんは、5人姉妹の長女で料理や音楽を聴くのが好きな村にいる普通の女の子です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下は、彼女から話を聞いた内容です。

 

『実家の近所に住む女性がパアン技術訓練学校で電気の技術を学び、今はその学校の先生の助手をしていると聞いていました。その女性から、学校のことを教えてもらい応募を決めました。4つの技術コースから一番興味がわいた建設科を希望しました。

学校生活は楽しかったです。もう一人、同郷の女子学生がいたのでさみしくありませんでした。寮には、女性の先生がいて、何かと面倒を見てくれて不自由することはありませんでした。でも、卒業時に希望した仕事がなく残念でした。実家は治安が悪化し戻れる見込みがなかったことからパアン市内で住み込みの仕事を希望して何度も学校と相談しました。パアン技術訓練学校からパアン市内にあるホテルでの仕事を紹介されました。住む場所がなかったので、ありがたく仕事をさせてもらうことにしました。新しい仕事を開始してすぐ実家の父の体調が悪いと連絡がありました。心配で仕事が手につかず、5日間ほどで退職してしまいました。住むところがなくなった私は、パアン技術訓練学校で一緒に学んだ同郷の友人がお世話になっている教会に住まわせてもらえることになりました。せっかくみつけてもらった仕事なのに申し訳ないとおもいつつ、実家からの支援もなく食べるのにも困りました。』

 

 

学校の連携プレーで次の仕事が見つかる

ミャンマーの戦禍の影響は、Yさんのような若者にも深刻です。地元が戦争で荒廃し、家族とも離れて生活することを余儀なくされます。

 

彼女の現状を聞き、学校では、パアン市内にて全寮制、無料の裁縫訓練(5月8日~8月31日)があることを彼女に紹介し、彼女は参加しました。全寮制なので住むところも食べるものにもしばらく困らないのが決め手だったようです。

しかし研修が終われば訓練所を出ていかなければならないため、私たちに相談がありました。建設科チーフ・電気科チーフ・事務方が連携しパアン市街にある電気店に頼み込んで住み込みの仕事を見つけることができ、彼女は9月1日から、住み込みで働き始めました。

 

この電気店には、電気科の卒業生が数人就職していて、オーナーはパアン技術訓練学校の卒業生を気に入ってくれています。この電気店は商売繁盛のようでこれまでの3支店から、新たに1支店をオープンの予定があるそうです。この女性は、建設科卒業ですから電気関連の知識はないことをオーナーは了承済みで、対人能力があるという学校の推薦で採用を決めてくれたようです。オーナーは、これまでパアン技術訓練学校から採用した子たちを見て信用してくれたようです。

 

私たちとしては、学んだ技術に関連した仕事について、更にそのスキルを伸ばしていってほしいと願いますし、学生もそう希望しますが、希望が叶わないケースも増えてきています。

 

このような状況は、単に教育や就職の問題に留まらず、国全体が直面する課題と社会的不安定性に根ざしています。この多面的な問題に対処するためには、教育機関、政府、企業、そして地域コミュニティ等のステークホルダーが一体となって行動する必要があります。特に女性やマイノリティに対する具体的かつ包括的な支援が求められています。