訓練生とのひととき Vol.5

Author: Akiko Mori



ランチタイムを利用して、訓練生たちと気軽におしゃべりする時間を持つようにしています。20~30分ほどの短い時間ではありますが、画面越しに向き合いながら言葉を交わすことで、彼らが歩んできた道や将来への思いが、ぐっと身近に感じられるようになりました。

そのひとときは、私にとっても大切な学びと新しい刺激を与えてくれる時間であり、日々の楽しみのひとつになっています。

今回は、そんなおしゃべりの中から、特に印象に残ったひとりの訓練生のストーリーをご紹介します。

ご紹介するのは、カレン州ラインブウェ郡村落出身、溶接科の Mくん(23歳) です。

 

10歳で初めて学校へ

ミャンマーののどかな村で育ったMくんは、5歳の頃から家の手伝いである牛飼いをしていました。毎日5頭の牛を連れて歩く日々。

「僕は一生、牛飼いとして家族を支えていくんだと思っていました」

10歳を過ぎたころのある日、突然両親から「今日から学校へ行きなさい」と言われたのです。最初は牛飼いのがいいと思ったものの、通い始めると、5歳から15歳までが一緒に学ぶ賑やかな教室で、毎日友達に会えることが何よりの楽しみになったと話してくれました。

 

困難を乗り越えて見つけた「夢」

順調に学び続けていた彼でしたが、中学2年生の時、コロナの影響で学校に通い続ける道は一度途絶えてしまいます。

その後は家族を支えるため、建設資材店に住み込みで働く生活へ。休みなく働き、稼いだお金はすべてお母さんに送る日々が続きました。

そんな家族想いの彼が、次に選んだ道が「溶接」でした。知り合いからこの学校の情報を教えてもらい、「誰かに頼るのではなく、自分の手で建物を建てられるようになりたい」

この強い思いが、彼をこの学校へと導きました。

 

仲間と共に描く、卒業後のビジョン

現在は、溶接の技術を磨く毎日を送っています。最初は慣れないことも多かったものの、同じ志を持つ仲間たちと過ごす日々は「とにかく楽しい」と、笑顔で話してくれました。

中間テストでは、クラスで 1位 を獲得するという素晴らしい成果も残しています。苦労や大変さをあまり表に出さず、どんなことも明るい笑顔で話してくれる姿がとても印象的でした。

卒業後について尋ねると、こんなビジョンを語ってくれました。

「村に帰ったら、タイから戻ってくる友人と一緒に、トタン屋根を設置するビジネスを始めるつもりです。村にはまだ電気が通っていませんが、自分たちで機材を揃え、家族や村の人たちの暮らしを支える仕事を目指しています。妹二人がバンコクでお手伝いさんとして働いているので、妹たちからお金を借りて機材、資材をそろえるつもりです。」

 

「今の生活に感謝」

村では1日3食食べることも難しく、お肉やお魚を口にする機会もほとんどなかったというMくん。

「この学校では、規則正しい生活ができて、美味しいご飯も食べられる。本当に恵まれていると感じます」

そう、はにかみながら語る姿に、私たちスタッフの胸も熱くなりました。

彼の新しい挑戦が、やがて村にたくさんの丈夫な屋根と、たくさんの笑顔を届けてくれる日が来ることを、心から願っています。

皆さまも、夢に向かって一歩を踏み出したMくんを、ぜひ一緒に温かく応援していただけたら嬉しいです。