Author: Akiko Mori

ランチタイムを利用して、訓練生たちと気軽におしゃべりする時間を持つようにしています。20~30分ほどの短い時間ではありますが、画面越しに向き合いながら言葉を交わすことで、彼らが歩んできた道や将来への思いが、ぐっと身近に感じられるようになりました。
そのひとときは、私にとっても大切な学びと新しい刺激を与えてくれる時間であり、日々の楽しみのひとつになっています。
今回は、そんなおしゃべりの中から、特に印象に残ったひとりの訓練生のストーリーをご紹介します。
ご紹介するのは、エヤワディ地域ヒンダダ郡村落出身、自動車整備科の Wくん(26歳) です。
勉強と生活のはざま
彼が中学課程を卒業したのは2015年のこと。卒業後、両親から「これ以上、学費を出すことができない」と告げられ、働きに出ることを求められました。両親は農業を営んでいましたが決して余裕がなく、家計はいつも苦しかったようです。しかし、仕事はすぐには見つからず、2016年から2019年にかけて、彼はパテインにある宗教学校に通うことになります。
そこは表向きは神学校でしたが、実際には貧困家庭の子どもや孤児を受け入れる教育施設でもありました。彼にとってそこは、「学び続ける場所」であり、「居場所」でもありました。
家族を支える時間
2020年から2023年にかけては、コロナの影響で故郷ヒンダダに戻り、家族の手伝いをしながら生活を支える日々が続きます。
その後、2023年から2024年には、いとこの誘いで漁師として働くことに。8〜10人ほどの仲間とともに、伝統的な漁法でナマズを網に追い込む漁を行い、月に約15万チャット(当時約1万円)を稼ぎました。決して楽な仕事ではありませんが、生活のために黙々と働き続けていました。
その後、モン州モーラミャインにある宗教学校のリーダーから声をかけられ、学習センターに滞在しながら英語教師のボランティアとして5か月間活動します。そこには60人以上の国内難民(村や町で戦闘や空爆が起きて家に住めなくなった人たち)が共に生活しており、彼自身も寝食を共にしながら支援活動に関わっていました。空いた時間には、独学で英語とコンピューターの勉強を続けていたといいます。
「技術を身につけたい」という決意
そんな日々の中で、彼はその学習センターのリーダーの紹介でTTS(職業訓練学校)の存在を知ります。「きちんとした技術を身につけたい」 「自分の手で仕事ができる人間になりたい」そう思い、自動車整備を学ぶために入学を決意しました。
卒業後に描く未来
卒業後は、いったん村に戻り、整備士として働きながら実務経験を積む予定です。その後の希望勤務地としては、ヤンゴン、パアン、モーラミャインといった都市部を思い描いています。早く両親に送金したいと語ってくれました。
さいごに
学費の問題、コロナ、生活のための労働、環境の変化—— その一つひとつが、簡単な選択ではなかったはずです。それでも彼は、「学ぶこと」を手放さず、自らの力で道を選び続けてきました。パアン技術訓練学校という学びの場は、彼にとって単なる技術習得の場所ではなく、 「未来を描き直すための土台」であり、 「可能性を現実に変えるための環境」、まさに「人生を変える学校」です。
この学校が提供しているのは、技術教育だけではありません。 安心して学べる環境、食事、仲間、規律ある生活、そして多様性の中で生きる経験—— それらすべてが、彼の人生を支える“基盤”になっています。
