Author: Akiko Mori
2022年10月に60名の訓練生が卒業しました。自動車整備科20名のうち、15名が国内にて就業、3人が家業をつぎ、1人はタイへ働きに行きました。今回は、ヤンゴン市の自動車ワークショップに就職した19歳の女子についてお伝えしたいと思います。
Sさんは、モン州タトン市に住む19歳。高校卒業試験に合格できず大学進学をあきらめ将来について不安を感じていた。そんなとき、日本のNGOが運営するパアン技術訓練学校の存在を、友人を通じて知った。メカニックになりたい!すごく興味が沸いて応募することを決めた。女の子がメカニックだなんて、親は反対したが、最終的には彼女を応援し気持ちよく送り出した。
学校は、全寮制で訓練内容の影響でほとんどが男子学生だ。自動車整備科のクラスは全部で20人在籍し、女子はSさん1人だった。最初は緊張したけど無我夢中で新しい技術を吸収した。気が付いたら男子を前にもグループワークをひっぱるほど、積極的に訓練に参加した。出席率も100%、期末試験も8割正解、優秀な成績で卒業をした。学校の推薦もあってクラスメイトの男子2名と一緒にヤンゴン市にある自動車ワークショップに就職した。ところが、就職して3か月がたったころ、彼女から学校に連絡があった。退職して地元に戻っている、とのこと。
チーフインストラクターは、彼女を学校に呼び、何があったのか聞いた。彼女から聞けたのは、次のような話だった。
学校で学んだことを活かして仕事ができることが実感できて嬉しかった。ワークショップのオーナーは食事と下宿を準備してくれた。(ミャンマーではよくあるスタイルだ) 給与は17万チャット/月からスタート。仕事は、主に電気系統まわりの修理部門を任された。ワークショップには毎日70台ほどの車両が入庫し大忙しだった。時々、彼女の上司が不在の時は接客もしなければならなかったのだが、彼女はうまく接客ができなかった。お客さんは、みんな男性で自分より随分と年上の人ばかりで緊張してうまく話せなかった。上司からも何度か助言を受けたけれど克服できなかった。職場のみんなはとても親切でハラスメントのようなこともなかった。しばらくすると原因不明の発熱が続き、急に気が弱ってしまい地元に戻ることにした。家に戻ったら体調も戻って今は元気になった。
チーフインストラクターは、次のように分析した。彼女は、よくできる生徒という印象だったからやめたというのを聞いて驚いた。せっかく紹介してくれた仕事をすぐやめてしまったことを彼女は謝った。同じクラスにいた男子メカニックは、問題なく接客をやっているようだから、技術や知識の問題ではない。彼女がまだ若いというのと性格や体調によるものが原因だと思う。女子が男子とまざり田舎の学校で訓練を受けるのと大都市ヤンゴン市で家族とも離れワークショップで仕事を続けることは、大きな違いがあるだろう。精神的な強さが必要だと思うが、訓練中、彼女に精神的な強さはあったように思う。おそらく、体調を壊した時に近くに家族や親しい友人が不在だったのが彼女を更に弱気にさせてしまったのだと思う。
せっかく学校に来たので今いる訓練生に彼女の実体験を10分ほど話してもらった。中間テストも終わり、期末テストにむけて訓練もより実践的になっているタイミングだった。卒業後のキャリアについても考えなければならない時期でもあり、彼女の体験談は、訓練生たちの励みとなった。
彼女はチーフインストラクターに今後のキャリアについて相談している。チーフインストラクターは、まずは彼女が何をやりたいのか、が重要と言っている。次なる大きな一歩を踏み出すことを学校職員一同、応援している。この彼女のストーリーは、学校内職員間で共有され、色々なことを考えさせられる教訓となっている。