通信インフラサービスの向上と今後の可能性

Author: Akiko Mori



長引くコロナ禍で、思うように活動もすすまずじりじりとした気持ちで過ごしている。様々なことについて、私が来緬した2000年初めの様相と似てきていると感じる。あのころに戻ったと思えばいい、そう自分にいい聞かせるとヤンゴン籠城生活もそう苦にはならない。ただ1つ、あの頃と大きく違う点がある。それは通信インフラサービスの向上だ。軍事政権時代は情報統制の目的でSIMカードを購入するハードルを高くしていたため、携帯電話は庶民が持てないほど高価だった。インターネットは電話回線を使用していた当時は、ファイル添付送受信もまともにできない状態だった。2014年くらいから劇的に通信事情がよくなり、携帯電話保有率も10数%だったのが、今では100%を超え、ADSLや光ファイバーも導入できる。家で過ごす時間が多くなろうとも、インターネットさえ完備されていればいろんな恩恵に預かれる。通信事情があの頃と同じだったら今頃どうなっていただろうと思う。




銀行業務

もちろん、仕事面でもこの恩恵に預かっている。コロナ禍が深刻化する少し前にスタッフの給与支払いを銀行送金に変えた。インターネットバンキングにも申し込んだ。かつては、給与日になると一人では抱えきれなにほどの札束を銀行から引き出し車で持ち帰った。100枚で1万円相当の現地通貨を手で数えスタッフ全員分を準備するというのが日常だったが、現金計数機が買えるようになって経理職員の負担が軽減した。コロナ禍で在宅勤務を継続し、感染リスクが高い銀行へも行かなくても給与支給手配ができたとスタッフも喜んだ。地方事務所への送金もしかり、自宅から決済が可能になった。


クラウドサービス

通信インフラサービスが向上したのでこれまであった多くの書類作業をデータ化することもできた。これまで、申請業務や勤怠管理簿など紙に記入し決済とりにスタッフが上長のあとをついてまわる状況だった。一部、決済をオンライン化したところに在宅勤務を余儀なくされた。少しずつ、総務関連の書類をデータ化し、事務所内の書類をクラウド保管した。これまで各スタッフのパソコンに保管されていたブラックボックス化したデータがクラウド上で一目瞭然で確認できるようになった。在宅勤務となったスタッフも必要な書類に自宅からアクセスでき混乱なく業務の継続が可能だった。


ヤンゴンと地方都市の格差

2000年初旬に比べたら、比較にならないほど地方にも通信インフラサービスが届き、私たちの技術訓練学校に来る辺境地に住む青年たちも携帯電話を持てる時代になった。サステナブリッジでは、ヤンゴン事務所に5人、地方事務所に52人のミャンマー人スタッフが所属している。事務所が給与を銀行振り込みにするので銀行口座を開設するよう通達したところ、ヤンゴン事務所のスタッフは、5人全員、地方事務所は52人中19人(36%)が既に銀行口座を持っていた。インターネットバンクサービスを利用しているのは、ヤンゴン事務所の5人全員、地方事務所では6人(11%)のみだった。半ば、強制的に銀行口座を開設させたわけだが、今、現在、インターネットバンクサービスを利用しているのは、地方事務所では20人(38%)となった。銀行口座開設とインターネットバンクサービス利用の有無から見ると若干の格差はあるようだ。今のところ必要がないのでインターネットバンクサービスを利用しないというのがほとんどだろう。




今後の可能性

ミャンマーの通信インフラサービスは、アセアン内で最も遅れをとっていたなか、外資の技術やノウハウをうまく利用することによって短期間で大幅な改善がされた。それにより人々の生活やビジネススタイルも変化している。配車、デリバリー、金融サービスなどアプリでの操作が可能になりミャンマーは日進月歩で急速に進化している。

 

私たちのミャンマーでの活動も通信インフラサービスの向上をうまく取り入れられないだろうか。コロナ禍を目の当たりにしてより一層、その思いを強くした。Withコロナを考えると訓練はオンラインとオフラインのハイブリット式で対応できればベストだ。実技訓練は私たちの売りなので、ぜひオフラインで実施したい。しかし、学校閉鎖の際にはオンラインで理論の訓練を僻地に住む青年たちに同時配信できれば、何もしないより良い機会を与えることが可能だ。訓練を終えた訓練生の就労状況モニタリングも通信インフラサービスを活用してうまくできないかと考えている。これらを導入することで、内部スタッフのITリテラシーも高まり、今後必要となる分野に少しでも明るいミャンマー人の輩出にも貢献できる。技術訓練を受け、収入が増えればより多くの情報に触れることも可能だ。

「誰一人取り残さない」SDGの理念を念頭に置きながら、通信インフラサービスの向上をうまく取り入れた活動を柔軟にすすめていきたい。