卒業生の今

Author: Akiko Mori

 

 

ミャンマーの経済が落ち込み始めて久しいです。わが校の卒業生はどうしているだろうか?いつもは、卒業後、半年までしかモニタリングを行わないのでその後については公式には情報がないのです。

 

そこで、各科で3人ずつ、今の様子をインタビューし、現在の様子を知れたのでここで一部、ご紹介します。

 

建設科

2018年に卒業したKくん(現在、コントラクター・オンラインコース講師)

ヤンゴンとバゴーの2拠点生活をおくる。卒業後、鉄筋建設物12件、デザイン設計もしている。訓練を受ける前は、収入はなかったし、何事においても自信が持てなかった。現在は、1-3階だての建築物のデザイン設計をしている。訓練後、自分でコンピューターの勉強もしてオンラインで建設の理論と設計計算について教え始めた。現在、70人の生徒がいる。

訓練を受けたことで建設技術を学ぶだけではなく、家族の生活を支えられるようになった。また、リーダーシップをもって決断していくスキルや対人コミュニケーションスキルも学び自分の人生に自信をもてるようになった。

 

 

溶接科

2016年に卒業したNくん(現在、溶接工として起業)

卒業後、ヤンゴンでJ&M スチールソリューションズに就職し、半年勤務した後、パアンにある自分の村に戻って起業して5年が経過した。無料でこれだけの技術が学べて起業することができたのでこの訓練を受けて本当に良かった。この技術を使って仕事をすれば、自分の人生を平和におくれる。

現在、村人の注文を受けてスチール製の家具を製作して家族を支えることができている。

 

 

電気科

2017年に卒業したYくん(現在の仕事、電気工事請負グループ起業)

自宅のあるカレン州パアン市で電気工コントラクターをやっている。訓練を受ける前は、2年ほど電気工としての経験があったが系統立てて学んだことはなく、定期的な収入もなく自信がもてなかった。

卒業後は、電気工として仕事を請け負うグループを自分で作った。勉強を継続し、2019年に注文が増えた。現在、パアン技術訓練学校の後輩5人も雇用して仕事をしている。

今では、家族を支えるだけでなく、雇用の機会も作ることもできている自分を誇らしく思う。自分の人生を電気工としてやっていきたいという目標ができた。

 

 

 

自動車整備科

 

2015年卒業したAくん(Forland 中国の自動車メーカー@マンダレー勤務)

 

卒業後、マンダレーで日野に4年間務めた。その後、地元に戻り起業したがコロナ禍になり、起業を諦め大型トラックを扱う中国のForlandに勤めて3年経過した。

訓練で国際標準の車両修理の方法を学べたのは、一生の宝物だ。今では、家族を支えることができて、自分に自信を持つことができている。

 

こんな機会を得られて感謝している。

 

 

 

おわりに

全部で12人にインタビューしたのですが、人生の目標を持ちながらみんないきいきと働く様子を聞くことができた。

 

ここには、紹介しなかった自動車整備科卒業の2人はそれぞれの地元で自動車整備工場を立ち上げ起業していた。整備工場といっても、高価な機材は導入できないので、小規模な修理をしたりメンテナンスする程度のものである。それにしても、場所代や工具など起業するにはかなり投資が必要になる。わが校の訓練生は、貧困などが理由で教育の機会を得られなかった子たちだ。

 

自動車整備科のチーフインストラクターが、「どうも私の教え子たちは裕福な女性と結婚する傾向があるようだ。」と言ってきた。2人とも地元の裕福な女性と結婚し、学んだ技術をいかすべくうまく起業することができているようだ。この2人以外にも数人、似たようなケースがあるらしい。

 

確かに、ミャンマーの田舎に日本のNGOで自動車整備やライフスキルについて学んできた若者がいたら、キラリと光るだろう。裕福な家では大抵、自家用車を持っていてメンテナンスのニーズは日常茶飯事にある。ご両親もよい婿候補として目をつけるかもしれない。自動車整備科を卒業したら、玉の輿にのるのかもね、なんて冗談で話した。

 

冗談はさておき、卒業生は技術を系統立てて学んだことで自信をつけ、自分の人生をこの分野でやっていこうという覚悟のようなものを得ている。また、自分で着々と前に進み続ける卒業生には特色がある。それは、学び続けること。自分が学んだ技術もしかり、コンピューターやインターネットなどITリタラシーは昔はなかったキーワードだ。もうひとつは、学校とのコミュニケーションを継続し、助けを求めること。本校を卒業したからといって、起業して順調にかせげるほど社会はあまくない。わからないことは、先生たちに電話して教えを乞い自ら学校に足を運んだり、先生に自分のワークショップに来てもらいしながら切磋琢磨している。

 

このように、インタビューの結果で多くの青年たちがいきいきと自分の人生を歩んでいることがわかった。中には、既に学校の先生より稼いでいる卒業生もいる。

 

将来は、大成した卒業生が学校に来て訓練生に自分のストーリーを話したり、より多くの若者が訓練を受けられるよう自分で稼いだお金を学校に寄付したり、ミャンマー人先輩が後輩を励ますサイクルができたら素敵だ。近い将来、そんなときがくることを期待したい。