Author: Akiko Mori
少し前に集計したモニタリングの結果、収入(日当)の変化について書きたいと思います。
2022年3月に33人、2022年10月に卒業した60人、合計93人の卒業生の就業状況を2022年11月にモニタリングしたところ、以下のような結果が得られました。
まず、93人の内訳をご紹介します。溶接科24人、自動車整備科30人、電気科25人、建設科14人。できるだけ、各科同人数で入学させたいのですが、人気によって応募数に差がでてしまい同人数を入学させるのが難しい状況です。毎回、一番人気なのは、自動車整備科でミャンマーの若者にとって車への憧れの根強さを感じます。毎回、一番応募数が少ないのは建設科で、わざわざ学校で学ぶ技術ではないという理解をするものも多いようです。きつい仕事であるというイメージも強そうです。
さて、卒業生モニタリングの結果をご紹介します。93人のうち、なんらかの仕事を得ているのは82人(88%)。学んだ技術に関連した仕事をしているのは、うち79人、学んだ技術に関連しない仕事をしているのは、うち3人。海外に行くために語学の勉強をしたり、別の技術について学んだりしているのが7人(7%)、仕事を探しているが見つかっておらず失業中なのが4人(4%)という結果となりました。
学んだ技術に関連しない仕事をしているというのは、例えば、電気科を卒業してフードデリバリーのお店で従業員として働くケースです。給与は40万チャット/月で、電気科を卒業し関連した仕事につく同級生と比較するとかなり良い給与をもらっています。溶接科を卒業して車の運転手として働いているケースなどです。
結果からわかってきたことは、海外出稼ぎ者が増えてきていることです。印象としては、これまでヤンゴンなどの大都市に出て日系企業を含めて外資企業に就職していた人たちがアセアン加盟国への出稼ぎ、その働く先を変えています。溶接科が一番、海外にでています。溶接技術はどこでも通用する技術で、この技術を身に着ければ世界どこでも活躍できるし、一生食べるのに困らないと以前から専門家の方から聞いていましたから、納得の結果でした。電気科は、日雇いのケースも含め全員、仕事に就いており、就業率は良いと言えます。一番、収入が安定する就業ステイタスが多いのは自動車整備科です。カレン州の田舎出身の若者がヤンゴンにある自動車整備工場に就職するケースもあります。ミャンマーでは、2021年2月のクーデタ―以降、依然として厳しい状況が続き、日系企業へ雇用される機会はぐっと減りました。しかし、当たり前ですが人々は生活を営んでおり、毎日、電気は使うし、車を持っている人は運転し、不具合も日常茶飯事におこります。多くの産業に必要な溶接技術もスケールは大きくなくとも、引き続きニーズは高そうです。建設科卒業者の失業数が多いのは、新しい投資が減っている現在の状況を反映していると言えそうです。
次に、卒業生らが本校に入学する前の収入データと卒業後の収入(日当)を比較しました。2022年5月~10月に訓練を受けた60人を対象(入学前の収入データがある60人のみなため)に、モニタリングは2022年11月に実施しました。
ミャンマーでは、雇用主が従業員の部屋や食事を準備してくれたり、報酬は日当や月給で支払われたりするため、一様に比較が難しいのですが、以下を仮定条件として算出を試みました。
月給の場合25日で割って日当に換算。それ以外に、福利厚生があれば下記を参照の上、同じく25日で割り日当に追加する。就業場所がヤンゴンの場合、下宿代(30,000ks) &食費(60,000ks)。就業場所がヤンゴン以外の場合、ミャンマー国内の下宿代(30,000ks) &食費(45,000ks)とし、就業場所がアセアン加盟国の場合は下宿代&食費合わせて200,000ks。
入学前にゴム農園などで日当収入を得ていて、卒業後に失業中だと、収入の変化はマイナスになります。入学前と卒業後の収入の変化を比較してみると、マイナスや変化なし層は、15人で全体の26%、日当収入があがった層は42人で全体の73%という結果になった。60人のうち、3人は海外出稼ぎ(電気科2人+溶接科1人)したことはわかっているが後追いできず給与額が不明なため本集計から外し、総数は57人です。
これまでは、就業率のみを指標にしてプロジェクトの効果をはかってきましたが、今後は入学前と卒業後の収入の変化にも注目し、プロジェクト効果を発信していきたいと思います。