訓練生とのひととき Vol.4

Author: Akiko Mori

 

 

2025年に入ってから、できるだけランチタイムを利用して、訓練生たちと気軽におしゃべりする時間を持つようにしています。20~30分という短い時間ではありますが、画面越しに向き合いながら話をすることで、彼らの歩んできた道や将来への思いがぐっと近く感じられるようになりました。そのひとときは、私にとっても新しい刺激となり、日々の楽しみのひとつになっています。

今回は、そんなおしゃべりの中から印象に残ったひとりの訓練生のストーリーをご紹介します。

ご紹介するのは、カレン州パアン出身の自動車整備科・Nくん(22歳)です。

 

日本語を独学で身につけたNくん

ご紹介するのは、カレン州パアン出身の自動車整備科・Nくん(22歳)です。

Nくんは日本語を独学で学び、すでに日本語能力検定N4を取得。私とも日本語でスムーズに会話できるほどの実力を持っています。本校に入学するきっかけも少しユニークでした。多くの訓練生は友人や親戚の紹介で入学するのですが、彼の場合は2023年に国家技能標準(電気工基礎レベル1)の試験を受けた際、その試験官の先生に本校を紹介されたのだそうです。

この国家技能標準という試験は、専門学校などで学んでいなくても技能を証明できるミャンマー国内唯一の制度。近所の電気工親方の元で修業をしていたNくんは、親方に勧められて受験したとのことでした。

 

コロナ禍で学びを止めずに

高校在学中に新型コロナの影響で学校が閉鎖され、進学を断念せざるを得なくなったNくん。しかし「それなら興味のあることを学ぼう」と決め、近所の屋内配線業に弟子入りしました。そこで仕事をしながら電気の知識や技術を身につけたのです。

また、日本のアニメが大好きだったことから、日本語も独学で勉強を開始。本校に入学する前まで、アニメ翻訳の仕事までこなしています。好きな作品を尋ねると、迷わず「鬼滅の刃」と答えてくれました。

 

 

新たな夢に向かって

パアン技術訓練学校を紹介され、「日本語を学んでいる自分なら、自動車整備を学べば日本へ行く道も広がるかもしれない」と考え入学を決意。もともと電気分野を学んでいたため、その知識は自動車整備の学びにも大いに役立ち、毎日の授業を楽しんでいるそうです。

卒業式を目前に控えた今、Nくんの目標は明確です。ヤンゴンに出て、N3合格を目指しながら、自動車修理工場で経験を積むこと。先日実家に戻って両親にその計画を話したところ、応援してもらえたそうです。

 

 

広がる未来への可能性

常に学ぶ姿勢を忘れないNくん。その姿勢に私も大きな感銘を受けました。さらに嬉しいことに、本校のインストラクターがヤンゴンで卒業間近の訓練生の就職先を探していたところ、日系の自動車修理工場が「日本語ができる生徒がいれば採用を検討したい」と話してくれたのです。

Nくんの未来の扉は、今まさに大きく開こうとしています。私たちもその成長を心から楽しみにしています。